男性不妊の検査の新常識 精子DNA断片化検査とは


不妊症の原因の約半分が男性にあるにもかかわらず、男性不妊についての知識や取組は遅れていますよね。病院へ行って、不妊治療を開始しても、ほとんどの病院では精液検査しかしないのではないでしょうか。

実は、精液検査で本当の精子の質である精子核DNAの損傷の状態などはわからないんです。

そのため、精液検査ではまったく問題ないのに、男性原因で全然妊娠しない、ということが起こる訳です。
特に、精子DNAの断片化率が高い場合は、受精卵の成長が途中で止まることが多いそうで、なかなか5日目胚盤胞に育たない人や、着床後に流産の多い人は詳しい検査をしてみた方がいいかもしれません。

精液検査

妊活中の夫婦が最初に病院に行ったときに行う検査の一つです。

精液検査自体は未婚の男性でも実施している人がいるくらい一般的になってきており、最近では簡易な検査を自分でやる検査キッドや病院に行かずに精液を郵送して診断する検査、スマホアプリを使って検査する方法なども出てきています。

精液検査で異常が見つかった場合、精巣やホルモンの検査、染色体や遺伝子の検査を行っていくことになりますが、多くのクリニックでは精液検査を行い、問題なければ男性側には異常が無いとの判断で不妊治療を進めていきます。

精液検査でわかること

「精液検査」では次のことがわかります。

  • 精液の量
  • 精子の数
  • 運動性や奇形率などの形態
  • 感染の有無

各項目の基準値は下の通り

 

検査項目 基準値
精液量 1.5ml以上
精子濃度  1500万/ml以上
総精子数 3900万以上
前進運動率 32%以上
総運動率 40%以上
正常精子形態率 4%以上
白血球数 100万/ml未満

これらの基準値を満たさない場合は、乏精子症や無精子症、精子無力症などである可能性が出てきます。
逆に言うと、この検査では精子の量くらいしかわからず、DNAレベルでの問題の判断はより高度な検査が必要になります。

精子DNA断片化検査の必要性

精子細胞は一日に何千万~何億個という莫大な数が作られるため、すべてが完全ではなく、頭部のDNAに損傷を負っている場合が多々あります。
こういったDNAの損傷は精子の数や運動率を調べる精液検査では判断できず、精液検査の所見が正常であっても、精子DNAの損傷率が高く妊娠しない夫婦が意外と多いんです。

精子細胞は普通の細胞のようにDNAを自己で修復する機能を持っておらず、こういった損傷のある精子が受精した場合、受精卵の分割が途中で止まり、流産してしまうと言われています。

精子細胞とは違い卵子細胞にはDNAの修復機能がそなわっており、受精後、精子DNAに損傷があっても、DNAが結合した後は卵子の能力で修復されます。このDNA修復機能は人によってまちまちではあるものの、年齢が影響していると言われています。

精子DNA断片化検査(DFI検査)

精子のDNAの損傷率を調べることの必要性はわかったと思います。

次に、実際の検査について見ていきましょう。

よく行われるのが、「DFI検査(SCSA(精子クロマチン構造検査))」です。

精子が酸化ストレスなどのダメージを受けることで精子のDNAが損傷します。
そして、損傷したDNAを持つ精子の割合をDNA断片化指数(DFI:DNA fragment index)と言い、断片化している異常精子が30%以上あると問題ありとなります。

DFIが高い時の対処法

DFIが高くなる理由として、精索静脈瘤尿路感染症などがあるとされています。

まずは、これらの診断を行い、必要に応じて手術などの治療を行うことでDFIが改善される場合があります。

特に目立った所見が無い場合はコエンザイムQ10やビタミンの服用、生活改善などで精子の質を向上させていくことが効果的です。

DNA損傷の主な原因は酸化ストレスですので、禁煙や飲酒、股間に熱がこもらないような生活習慣を心がけたり、抗酸化作用のある食事やサプリメントにより改善が期待できます。

精液中酸化還元電位測定(ORP測定)

断片化検査と同じように高度な精子の検査で、精子の質を判断する検査の一つです。

精子DNAに損傷をあたえる酸化ストレスを判定する検査で、精液の酸化還元電位を測定し、精液中の酸化ストレスの強さを調べます。

顕微授精と精子の検査の関係

顕微授精(ICSI)における妊娠率は精子の質とは無関係という報告がありますが、顕微授精は1つの精子を人工的に卵子に入れることを行うので、ここで選ぶ精子の質が重要になるのは言うまでもありません。
また、自然妊娠や体外受精などでは質の悪い精子は受精しないような仕組みになっていますが、機械的に卵子に精子を入れる顕微授精ではこの古い落としの作業ができません。

結果、質の悪い精子で受精した受精卵が、成長が止まってしまったり胎児に異常が生じる可能性がでてくるのです。

このことから、顕微授精を検討している人にとっては精子の質は大変重要なことであり、高度な精子の検査を受けることが重要と言えるでしょう。

精子DNA断片化検査 まとめ

精液検査で問題が無かった人の内、断片化率が高い人と低い人に分けた時精子と卵子の受精率はほとんど同じだったそうです。
しかし、そこから受精卵の分割が進んだ時に、断片化率が高い人のグループでは分割が途中で止まることが多く、着床後の流産の確立も高かったそうです。

また、断片化率が高い人のグループの方が不妊治療期間が長いというデータもあります。

精液検査では異常がなかったのに、なかなか受精卵が3日目や5日目胚盤胞に成長しない、着床までいっても流産を繰り返す人は一度、精子の高度な検査を受けてみるといいかもしれません。

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